20歳の時にアメリカ・シアトルでの生活に使っていた車。ポンティアック・ファイヤーバード。上位車で、一部のファンに絶大的人気の【トランザム】が欲しかったが、まだ若く、ともかくお金もない立場で、安く譲ってもらえる話に飛びついて買った。
ノーズが長く、ホイールベースも長く、曲がらない。5Lのエンジンも、トルクフルではあったが、それほど速くはない。もちろん燃費は悪い。
シートは、リクライニングしない。荷物もあまり乗らない。バックミラーではほとんど後ろが見えないし、最大部で厚さ20cmもあろうかというデカいドアは、坂の多いシアトルのダウンタウンで駐車すると、重すぎて開かない・・・。
しかし、ただただ乗っている事が楽しかった。重い車体を後ろからドッと押し続けるような感覚が・・・。曲がり角で長いノーズのずっと先の方から曲がるその感覚が。
毎日乗るたびにゾクゾクっとした。この鉄の塊を、広大な大地の真ん中で、デパートの駐車場で、自分の力で動かしているという感覚がたまらなく好きだった。
車だけでなく、家だって、性能だけが幸せの素ではない。
プリウスに乗りたい人はそれでいい。Nボックスに乗りたい人もそれでいいし、エルグランドの大きさが欲しい人もそれでいい。そこにその人の幸せがあるなら・・・。
他人さんに迷惑をかけるような建物なら、それは初めから論外として、住んでいる事が・・・、住んでいるその瞬間・瞬間が楽しい家がいい。
やみくもにデカいアメ車がいいなんて、そんな話ではない。ただ、その人それぞれに合わせた『居心地』を大切にする家。
ある瞬間、ニマっと笑ってしまうような幸せ感のある家。
そんな家を作りたい・・・ブツブツ・・・・・。