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2016年8月の2件の記事

マンション和モダンリノベーション

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 (第1回目のプラン提案)
 
マンションリノベーションの物件がひとつ完成し、引き渡しが終わった。
新築マンションを購入した若いご夫婦が、『入居の前』に、自分たちの趣向や希望をたっぷり話し合った【自分たちだけの家へのリノベーション】を施したいというものだ。
 
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【リフォーム】と【リノベーション】は、どうちがうのか。簡単に言えば、【リフォーム】は、老朽化した建物を新築時の状態に戻すこと。一方【リノベーション】は、建物に大規模な工事を行い、性能や意匠をさらに向上させ、もっと使い易いものに改善すること。
 
ご夫婦は、マンションの購入時にいわゆるオプションというものをあまり付けず、シンプルな洋室ばかりの部屋にとして無駄な出費を抑えた。そして本体工事完了・引き渡しと同時に【リノベーション工事】をして、『デベロッパーからあてがわれた選択肢の少ないありきたりなマンション』ではなく、自分たちの持っている問題をきちんと解決し、住んでいる事自体が楽しくなる『理想の暮らし』を叶えたいと思った。
 
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希望は、『モダンな和の空気感』のある家。出来れば和室で寝たい。少なくとも子供が幼いうちは、一緒に畳の上でゴロゴロしたい・・・。と言うのが一番の願いだった。そして、どうしてもマンションにありがちな、空気の動かない『行き詰まり感』をなくし、南北に風を流してほしい・・・。
 
また、マンション購入契約が終わってから二人目のお子様を授かったので、将来の子供室に対する対応を考え直さなければならない。リビングも和室をつけて大きくするが、子供室も大きくして、しかし“さらに”収納も大きくしてほしい・・・。
 
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考えれば希望はいくつでも出るが、ただし予算がない。ご夫婦も新築からのリノベーションでどのくらいの費用が掛かるかもわからなかったであろうが、何と言ってもマンションを1つ購入した後だ。であるから、必然的に出来る事には制約がある。
 
だからといって、わからないからプロに相談するのであって、『暮らしのプロ』としては、目の前に置かれた『予算』だけを見て、出来る事だけを提案するという訳にはいかない。
 
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全体の統一感を見ながら、解体部は出来るだけ小さくし、既存のモダン洋風材料(建具やキッチン等)と今回の和モダンの意匠がケンカしないようにする必要がある。そして、家族の将来の姿、暮らしを想像し、ストーリーを作り込む。
 
その上で、今出来る事、やらなければならない事と、後からやる事・出来る事を何度も話し合う。将来の姿がおぼろげにも想像できるから、今どこまでやるべきかがわかるわけだ。
そして、それでもマンションの他の部屋とは全く違う【自分たちだけの和モダンな家】となるように、オーナーと工務店、設計の心をまとめ上げていく・・・。これが、設計士の仕事だから。
 
今回出来るのは、本来考えた全体構想の半分かな・・・。
 
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まぁ、ぶっちゃけたところ、設計料としては、まったく合わない・・・。どんな仕事であっても、ある一定以上の仕事は発生する・・・。面積が小さくても、やる事は減らない。
しかし、こういうリフォームの場合は、工事費の数%しかいただけない・・・。つまり、少ない予算に合わせて作業量は増えるのだが、予算が少ない故にいただけるものも少ないのだ・・・。
 
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最後は、とにかく喜んでもらいたい・・・。
 
新しい『自分たちの家』を人に自慢したくなるくらいの『ありがとう!』をもらった時、やっと報われた気になる・・・ブツブツ・・・・・。
 
 

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葦戸(よしど)は、夏の知恵。涼しや。

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伊勢内宮前のおはらい町にある【五十鈴茶屋】。毎月の朔日参り(ついたちまいり)の後、3回に1回くらいでちょいと寄る。子供たちと一緒にという事もあるが、たいていは一人。そして早朝・・・。

特に珍しいところでもないかもしれないが、早朝となると人もあまりおらず、小さな庭園を独り占め。もの想いにふける自分に・・・酔える・・・。

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さて、こちら、夏になると障子戸や襖を『葦戸(よしど)』に入れ替える。葦を組子の間に入れた、夏の仕掛けだ。

昔ながらのお家では、衣替えの季節、6月の声が聞こえる頃、襖・障子を≪葦≫や≪竹≫などを入れた『簾戸(すど)』に変えていた。

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『葦戸(よしど)』とは、『簾戸(すど)』というジャンルの中で、葦(ヨシ)で作られるもの。

ちなみに『葦』は、≪ヨシ≫とも≪アシ≫とも読むが、ヨシは中が空洞になっているもの。アシは、中が詰まっていものらしい。

アシは≪悪し≫だそうで、虫がつく。もちろん、ヨシの方がいい。

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五十鈴茶屋、秋から春までは、このように障子が入っている。もちろん、これはこれで、古き良き日本らしく、趣がある。

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しかし、葦戸(よしど)になると、やはりとても涼しく感じる。

日本の夏が暑いのは、今に始まったことではない。その暑さを、視覚的に、そして心で涼しくする方法が、この国の建築にはいろいろあるのだ。

数字では、決して表せない涼しさ、そして清々しさである・・・。

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今日も、白髪交じりのヒゲ面のオッさんが、ひとりお抹茶セット・・・。水まんじゅうがとても冷たくて美味しい。

でもまぁ、オッさんがひとりで自分に酔っててもねぇ・・・ブツブツ・・・・・。

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