2014年11月の10件の記事
トイレの未来
脚立が置かれている部分に、これから便器が座る。トイレの改修中・・・。
新築のプランニング時、将来の介護へ対応を考え、1階のトイレの横幅は出来れば広く取りたい。しかし、小さな家では畳1帖以上の広さにすることは、なかなか難しい。それならば、可能な限りトイレ室の向きを長手方向が廊下側に向くように心がけている・・・。その心は・・・。
これから3枚引違いの扉を取り付け、出入り部分の有効開口を大きくして、車椅子の動作や介護・介助に廊下を利用できるようにする。ただ、既製品の扉や機器を取り付けるだけでは面白くない。腰から上を消臭・調湿・空気清浄効果が高く風合いの良いシラス壁とし、腰下はシナ合板を貼り少し強めの自然塗料塗りとする。
ちょっとだけ贅沢な和モダントイレに・・・。もちろん、まだ工事中。
新築時にも、数十年先のリフォームの事を考えたい。
【古市に生きる家】 築40年、70年代和モダンの改修・・・もうすぐ完成.
段差のない床がいいのか、否か
床に段差のない家が良いとは思わない。むしろ、段差によって初めて生まれる広がりや住処の楽しさを伝えたい・・・。
日本の70年代モダンの家などには、内部建具は三方枠でなく、四方枠という事が多かった。下枠になる部分も15~20mmの高さになる戸当りがあり、廊下からの風の侵入を防いだ。地面に座る習慣のある日本人にとって重要な物だったのかもしれない。
もとよりこの時代には、バリヤフリーなどという言葉はなかった。しかし、本来バリヤフリーとは、床に段差がないという意味ではない。生活の障壁を取るという事だ。戸の隙間から流れる風という障害をなくすためであるなら、下枠という段差もバリヤフリーと言えるだろう。
ただしここは、老夫婦の家。本人たちは40年住むこの家で、下枠の20mmの段差など気にした事がないというが、近い将来障壁になりえる下枠段差は、フラットにすることを勧めた。
新しい下枠は、タモ無垢材。これから枠と同じ色に塗る。左の新しい床板は無垢の唐松(養生ベニアは別)。右の古い床板は、70年代台らしい寄木組の合板。ここでも、古株大工の丁寧な技が見える・・・。
【古市に生きる家】 アグラ設計室
和室の土壁仕上げの価値
築40年の家の改修・・・和室の聚楽(じゅらく)の2回目の塗り替え。新築のようになるとは言わないが、飴色が深くなっていく建具に絡んで、ピンと張った静粛感と空間の落ち着きを取り戻す。
元来日本の家は、柱と梁の接合部の靱性(粘り)を構造の基本としていた。土壁はその粘りを補助し人々の命を助け、仕上げの塗土は何年かに一度もしくは大きな自然災害の度に塗り替えられた。災害は、時として村の左官職人の仕事を生み、大工の仕事を生むという側面を持っていた。
手を掛けなくていい材料は要らない。家主が家を気づかい、手を掛け、それが家の行事、家族の行事、村の行事となり、人々の仕事を生み、おのおの役割を生み、責任感を生む。家というものは、それほどに重要なものなのだ。
...【古市に生きる家】 アグラ設計室