はなれのリフォーム
いつものように写真家の米田正彦氏にお願いして現地へ。12坪ほどの小さな建物だけれども、撮影は朝一から日没後まで続く。もちろん、良い光の時間を探すためだ。
なかなか寒い日だった・・・。しかし朝からとても天気が良く、快晴。撮影には最高の日。中庭を挟んで母屋を向かいに見る【はなれ】の改修で、面積が小さく、どれほどの写真が撮れるかなと少し心配だった・・・。
先日、また一つお客様のリフォームが完成し、出来栄え素晴らしく、今回も米田氏に完成写真を依頼したというわけだ。
彼の写真はまだ仕上がっていないが、ここで少しだけ紹介したい・・・。
陶器を扱う御商売の先代が、お客様を迎えるために作った建物。丁寧な大工仕事であったといえども、50年近い歳月でいろんなところで痛みが激しい・・・。
広い敷居内には母屋を含めいくつもの建物があるが、みな古い。今回のご依頼は、敷地全体の将来計画と各建物の耐震検討から始まった。
まず手を掛ける事になったのが、この【はなれ】の改修。大きく傾いた床を直し、構造補強をして、「娘や孫たちが帰ってきても気持ち良く泊っていけるような、そんなリフォームを!」というのがご希望だった。
毎日使う部屋じゃない。でも、お客様をお迎えする【はなれ】だからこそ、日常とちょっと違う少し張りつめたような空気感があっても良いんじゃないか・・・。品の良い旅館のような感じが出せないか・・・。試行錯誤が続いた・・・。
当然、予算との戦いもある。いくら掛かってもいいなら、新築に建て替えの方がいいかもしれない・・・。ポイントを絞って、リフォームらしく、残すべきところは残す・・・。しかし、どうしても基礎の全体補強が必要であったため、床・壁は取り除くが、あつらえの良い船底天井は残した。
仏壇や置物が煩雑に置かれていた床の間を整理。仏壇を折戸のある仏間の中に納め、先代が残された数々の陶器が整然と飾れるような、奥行きの深いケヤキの床の間を造る。
狭かった便所を、前の廊下を取りこんで1坪の広さにし、高級旅館やホテルのような、洗面を兼ねたトイレに・・・。正面に大きな鏡を配し、デザインの面白いクロスとタイル、そして小さな障子窓などで装う。
建具枠や廊下の床板もタモ材で統一。目のしっかりした質感が、既存で残した古い材ともしっかりと調和し、独特の空気を造った・・・。
なにより、面白いのが、中庭を望む北側の縁(廊下)を3間半の長さがある土間にしてしまう事。今まで室内と中庭という2つの空間の間にあった見えない大きなへだたりが、室内にある外スペース【土間】という中間地帯を介し、今まで以上に広さを感じながら、流れ良く繋がったように思う・・・。
昔は玄関以外では、靴は外の踏石の上などに脱ぐものだった・・・。しかし、今の時代、お客様の靴が、外に脱ぎっぱなしというのは喜ばれない・・・。
詳細は、米田氏の写真が仕上がれば、またHPにUPしたい。小さな建物であるが、すばらしい写真に仕上がっていると思う・・・。なんか、どこかの高級旅館のような・・・茶室のような・・・和風博物館のような・・・。
完成し、早速母屋の計画も進めたいとお話しをいただいた・・・。いや、しかしこれは、やっぱり大工さんと担当の監督さんの、細かな配慮と丁寧で確実な技術のおかげだよね・・・。
こういう気持ちの良い仕事ばかりならなぁ・・・ブツブツ・・・・・。
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