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2010年11月の3件の記事

銀座のオンナ

101127001_2 銀座の女は綺麗だ。他のどの街とも違う。銀座の女だ!

 いかにも銀座のママさん達をたくさん知っているような事を書き始めたが、設計事務所はそんなに甘くない。東京の優良企業の幹部さんなら数時間分の人件費で飲める酒も、我々にとっては1ヶ月分の売上だ!

 でも、銀座の女が綺麗だという感想はウソじゃない。一人で東京へ出張という時は、必ず銀座を歩く。あくまで【歩く】。なんとなく、自分のどこかのスイッチをリセットするために・・・。

 もう20年も昔、社会人1年目、現場監督としての初めての現場が銀座5丁目。社会人としての心得もなく、建築学科を卒業したと言っても建設のイロハもさっぱりわからないそんな坊主が、大人のあこがれの地のような【銀座】にいきなり派遣された。

 しかしそこは、砂まみれ埃まみれの建設現場。背中にモンモンつけたオッサン達の文句を聞き、元暴走族さん達の暴走自慢を聞きながら、自分でもよくわかっていない現場指示をその恐い人たちにする。

 101127006「どういう意味だぁ?お前何言っているんだぁ?」という言葉に顔面蒼白になりながらも、負けるわけにはいかない。仕事とは、きっとこういうものなんだ・・・。毎日の一瞬一瞬が緊張の連続の中、私は銀座・・・、いや裏銀座に育てられた。

 夜の銀座じゃない、昼間の銀座。ビルの中でなく、アスファルトの上でなく、地表下17mの泥の中、地上数十m上空の幅10cmの鉄骨の上。毎日必死になって覚えたのは、建設に関する知識だけじゃない。人間関係の作り方、人に指示をする方法、死なない事、ケガしない事。

 夜の銀座ももちろん歩いた。現場の朝は早く、現場監督の夜は遅い。帰りはいつも、銀座の生命エネルギーが120%の勢いで盛り上がる時間。その時銀座の女は・・・、銀座を歩く女達は、綺麗だった。

 今の銀座とは、もう、ちょっと違うのかもしれないが、銀座の街を歩く女性は、いつもより2mmだけ背が高い。いつもより2cmだけ歩幅が広い。いつもよりほんの少しだけ歩く速度がゆっくり。そんな気がした。

 心なんだと思う。銀座を歩くという気持ちが、自分自身を引き締める。自分自身を1段上に置きたくなる。優雅であろうとし、大人であろうとする。背筋が伸び、ヒザをキレイに伸ばしてゆっくりカカトつけるように歩く。そんな姿勢が、銀座の女を綺麗にしているんだと思う。

101127002 一人で東京に出た時は、必ず銀座を歩く。凛としたその女性達を見て、自分自身の気持ちも引き締まる。この街で教えられたのは、仕事の事、大人としての自分の事。

 先週、東京出張へ。ビックサイトでの大きな展示会。新しい建材の知識を入れ、いくつものセミナーにも参加。ただしもう一つの目的は気分転換。自分をリセット。銀座を歩き、銀座の酒を飲みたかった。

101127004  気分転換ごときで銀座の酒を飲むためは、こんな地方の小さな自営業者としては、それなりの努力が必要。往復は深夜バスで0泊3日、車中2泊。朝飯はアンパンとコーヒー。昼は会場のランチセットで、夜は新橋の吉野家の牛丼!

 さすがに銀座での現場作業員だった経験から、夕飯に行きつけだった安い中華を目当てに歩きだした。心はすでに、回鍋肉かチャーハンか・・・。

101127005 ところが2件あった目当ての中華店が両方とも無いじゃないか・・・!!つぶれてた・・・。王子製紙の裏にあった【天下一】の回鍋肉。コンパル通りにあった【味の一】の焼き飯。特に「味の一」は、ボロボロの普通の中華屋なのに、完全な【銀座のママ!】的な、とびっきり綺麗な中年のママさんがいて、とても人気の店だったのに・・・!まっ、あれから20年、中年のママじゃなくなったからかな・・・。 

 そこで探したのが、その頃同僚と一緒に飲んだ後よく行った吉野家・・・。あるんだなぁ、まだ・・・!ただし、280円の牛鍋丼はない・・・。銀座・新橋のコストには、合わないんだろうか・・・。

101127007101127008 お目当ての酒場は2店。一つはステラ。以前にも書いたが、東京での現場監督時代に通い詰めたショットバー。お酒も覚えたが、入れ替わり立ち替わりやってくる銀座ならではの変わり客達から、さまざまなお話を聞いたっけ。

 今カウンターの中に立っている若いバーテンも、少し昔の話をしただけで、ちゃんと私をエスコート。あの時代を少しだけ思い出す事ができて、いい気分にしてくれた。

101127009_2 二つ目の店は、ラルゴ。ステラでとてもお世話になったバーテンが、もう10年以上も前に自分の店をもった。銀座は彼の2軒目の店。とても隠れ家風で、やってくる客は常連ばかり。彼とは昔、公私共によく飲んだ。

 銀座の女は、平日の夕方からがいい。その時間に銀座を歩ける女性の品もいいが、夜のお店に出勤する女性も一味違う。

 2mmだけ高い身長をもつその女性達は、日本の中枢を動かす人々の束の間の幸せを作り出しているプライドを持ち、だからといって、気づかいのある女性的なしぐさを忘れない。

 まっ、なんのかんの言っても、深夜バス使って牛丼食って節約しても、そんな銀座の女のいるお店で飲めるわけではなかったか・・・。これからまた、頑張ろうっと・・・!

1011270010  おっと、そう言えば、今回も銀座4丁目交差点にある【キムラヤのアンパン】の前まで行ったが、またアンパンを買わなかった。実はこれ、20年前から悩んで、いまだに買えていない・・・。たかが140円のアンパンなのに・・・。その頃、わざわざ銀座でそんな高いアンパン買うなんて、考えられなかったのだ!

 しかし、よく考えたら、この日の朝食べたプロントのアンパンは、160円だったじゃないか・・・!何をやっているんだ俺は・・・。銀座で大人になったハズなのに・・・・・ブツブツ・・・・・。

 どっちのアンパンの方がうまいんだろう・・・・・・・。

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101回目の・・・・・大失敗!

101116001_2 写真は、今朝の朝食。大失敗とは関係ない・・・。今朝は朝一番から市民センターでガン検診。

 昨夜の9時から何も食わず、やっとお腹に入れたものが粉末発泡剤とバリューム。

 毎年そうだけれども、バリュームの後の朝食には、「コッテリ!」したものが食べたくなる。今日は家に帰って、チーズたっぷりのケチャップパンとたまご、濃~いカフェオレと、もうひとつチーズを!

 検診を頑張っても、こんな塩分・脂肪分・プリン体たっぷりの飯を食っていては・・・ダメな歳になっているのを忘れている・・・・・。

 大失敗は、昨日の話。写真は、ない。場所は近くの中学校。地区の青少年育成協議会の依頼により、中学2年生に【職業ガイダンス】の講師を頼まれた。

 昨日の午後、会場へ。待ち合い準備室には、12名の講師役の方々。四日市を基点に頑張っておられるいろんな職種。看護師、消防士、音楽家、元Jリーグ選手、シクラメン農家、プログラマー、船員、美容師、フレンチシェフ、ネイリスト、取材記者、それに建築士。

 主催者やら校長やらに丁寧なあいさつを受け、世の中のいろいろな職業を子供たちに紹介して、将来の進路決定に役立たせたいとのお話。

 歴々の方々と同席し、校長の挨拶まで受けたもんだから、なんかエライさんにでもなったような気持ちになった。と言っても、こんな仕事をしていても、大勢の前で話をするなんて、得意じゃない。まぁそれでも、独立して数回は小さな講演も持った事があるし、なんとかなるだろう・・・・・。

 甘かった・・・。相手が悪かった・・・。身長2m50cm、体重250kgの大男・・・・に、戦略無く挑み掛かってしまったようだ・・・・・。

 相手は、20名の中学2年生。教室に入ろうとすると、一斉に、冷たい40個の目玉がこちらを見る。そして、その瞬間、「興味ねぇ~!」的に、身体ごと横を向いて、目を外されてしまった。

 ある者は、机に大きく肘をつき、ある者は後ろの友達と話しだし、ある者はどうやら風邪は引いていないのに、大きなマスクで顔を覆い、シカメッ面・・・。

 目の前に座るこの少年達(女子1名)は、12名の各職種の講師からわざわざ【建築士】という職業の講師を選んだ・・・わけではない・・・・・。学校から一方的にそういう授業(講義)のプログラムを組まれ、12分の1を選ばされただけ。そう、このオジサンの話を聞きたかったわけでは・・・ないのだ・・・・な・・・・・。

 興味のない中学生に物を言う。こんな難しい仕事が世の中にあったのか・・・・。打っても響かない鐘・・・。どうやったらこの重い空気感を打開できるんだ・・・!

 といっても、20名全員が建築に関して興味がないわけではなく、もちろんマジメそうに姿勢よく座っている生徒もいる。その数名の生徒達は、この人から建築業界ってどんなものなんだろう・・・って話を聞きたいのかな・・・・・。

 ただし、こちらが完全にこの空気に呑まれてしまっている・・・。

 この講義の準備に2日半を費やした。短い時間の講義といえども、時間の中で中身ある話をするために、タイムスケジュールを作りながら話す内容とキーワードをまとめておく。興味を持ってもらうために、いろいろなカラフルな図面6枚と模型を3つ用意。写真を見せる為にパソコンも準備。しかし、お願いしたプロジェクターは、思った通り用意されていなかったので、予期して事前に施工事例や海外のキレイな写真をカラー印刷して数十枚。

 ところが、ここが今回のダメだったところか・・・。相手が中学生だってわかっていたのに、大人に話すのと同じ用意をしている。何を見せても、なにも響かないじゃないか・・・・・。

 小さなネタでも笑わない。親近感を見せる為に、「オジさんも中坊のころは悪かった・・・!」なんて話しても無視・・・・・。う~・・・脇の下に汗が・・・・・!!!

 普段はしゃべりすぎて、絶対に時間が足らなくなるところ、全然時間が進まない・・・。予定より早く、「なんか質問ないですか~?」を言ってしまい、・・・でも反応なし・・・。先生にうながされていくつかの質問・・・。

 最後に、持って行った模型を各自の席に回したら、やっと少し反応あり!・・・そして時間切れ・・・わたくし・・・撃沈・・・。

 自信を完全に失ってしまった瞬間・・・。目の前には、最初から最後まで机にうつぶせて寝ていた奴の姿が・・・。このやろ~!!!・・・・しかし、何も出来ない・・・。せめて、こいつを起こしたかった・・・・・。

 よく、中学の教師が一番大変だと聞く。本当は興味がないわけではないんだよな、きっと・・・。中学生にとって、興味がないフリをする事が、最高の美学なんだ。そう言えば俺もそうだった。いきがって、親に暴言もはいたことも・・・。今は大きく後悔しているけど・・・。

 ほとんど一戦を交えることなく撃沈された戦艦ヤマトではあったが、反面、すごく勉強になったかも・・・と思う・・・。でも、帰ってからなんだかすごいストレスで甘いものが食いたくなり、近所のケーキ屋でシュークリームを買ってきて、ムシャムシャと食べながら一人反省会・・・。あの時どうすれば、ツカミで心を引っ張れたのか・・・。

101116002 机を取り払うべきだったかな・・・。輪になって話をした方がよかったか・・・。現場で臨機応変にやろうとは思っていたんだが、普段毎日小学生ばかりを見ていて突然中学生を見て、その大きさにビビってしまった・・・。「じゃぁ皆さん、まるくなりましょう!」なんて、言えなかったなぁ・・・。

 でもよく見れば、まだみんな幼い顔を持っている。もっと目線を合わせないと・・・。そういう意味では、大人と話すときも一緒か。まずは共感、・・・近い存在になること・・・。

 来年も話が来たらリベンジか・・・!いや・・・、やめとこうか・・・中坊こわいし・・・。あぁ101回目も、本当のブツブツになってしまった・・・!!やっぱり次は、負けねぇぞ・・・ブツブツ・・・・・!!秋の空は、青がキレイだぁ・・・・・・。

 

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愛しのエスパーニャ

 この意図のないブツブツブログも、今回で100回目。気負って気負って何を書こうか考えて、結局何も浮かばない・・・。

101105002 いい事なのかどうなのか・・・。忙しく、暇なく、でも金なく・・・。あの大好きなスペインの大地を離れてからはや12年。二度とふたたび訪れる事が出来ない・・・・・。帰国の時は、「いつか自分の事務所を開設したら、年に何度もスペインとの往復ができるような仕事を・・・」なんて、やはり夢でしたか・・・。

101105008 しかし、あの頃からすると、えらくスペインが日本にとってメジャーになったおかげで、いつでもスペインワインも飲めるし、ハモンイベリコも食べれるし、毎日のようにリーガ・エスバニョーラのサッカーの結果もテレビでやってるし、まぁ、スペインを忘れる事はない。グーグル・アースを見れば、カディスの行きつけだったレストランまで見れてしまうし・・・。

 でも、違うんだなぁ。やっぱりあの空気が吸いたい・・・。あの空気の中で、あのニンニクとオリーブオイルたっぷりの料理を食って、冷たーいヘレス(シェリー)が飲みたいのだ・・・!!

 という事で、第100回目のブログってことで、まぁ、今日は大好きなスペインの思い出をブツブツっと書いてみようか・・・。一人でスペインの海を思い出して・・・。(知らない人が見ても、おもしろくもクソもないかもねぇ・・・。まっ、自己満足の世界ですから・・・。)

 地中海性気候の代表のような国。夏、雨少なく乾燥し、太陽の日射をまともに受けて温度は暑いが心地よい・・・。内陸側では、冬はおそろしく冷たい北風が吹抜ける。しかし海岸側は比較的温暖。 山側(内陸側)のスペインも最高だけど、やぱり彼(か)の国は海がいい。

101105001 私のスペインは、この窓から始まった。言葉もわからない、文化も全然違う国に、ある日突然降り立つ。なんちゅうか、不安っていうのか、どうしていいのかわからない。会社もやめたし将来だってどうなるかわからんし。「さあどうしよう・・・」の最初の朝は、この窓だった。

 渡西前に連絡をつけたマラガの語学学校の寮というか寄宿舎というか、ともかく数人の生徒が一緒に寝起きする共同のアパート。実はこの数年後に結婚した妻も、私が渡西する数ヶ月前に、同じ窓でスペインでの1日目の朝を迎えた。ン~、思い出の窓になってしまったな・・・。

101105005 マラガは地中海沿岸の町。ガキの頃は異世界だった【地中海】なんて言葉。海そのものは、志摩の海とかわないような気もするが、さすがリゾートで飯を食っている国。ビーチが楽しい。水のように酒を飲むし、魚はうまいし、人はあくせくしてないし・・・。

 夏は平日だって、ご覧のとおり。海岸は若者もガキも年配者も、みんなおのおの楽しみながら日光浴。海も青けりゃ空も真っ青・・・!

 ジブラルタル海峡からも近いこの町は、風はタリファの街のように吹かないが、旨い魚の宝庫である。スペインは、ヨーロッパでもっとも魚を食べる国民。日本ほどではないのだが、ともかく魚料理が旨い。(肉料理は、日本に比べるとまだまだかなぁ・・・)

101105003 1年後、セビージャの知人ルイスが、夏のバケーションで使うカディスの別荘を、秋・冬・春と住まないかと言うんで、その話に乗った。別荘と行っても、ボロボロのアパート。ただし、カディスの街中から10kmも続く白浜ビーチのまん前というロケーション!

 カディスに住むためには、学生ビザに書かれている学校を変えなければならん。これが四苦八苦・・・!

 街中には日本人は住んでいないような所だし、学費が安くてビザが下りるような語学学校もないもんだから、カディス大学に潜り込む。

101105004 潜り込むたって、本当に裏口からそうっと潜り込んだらビザが取れないから、日本での大学の単位やなんやらを外務省を通して取り寄せて、編入申請。

 ところがこれ、ここがスペインらしいところ。審査に2年を要し、それまでの間は聴講生として在学していいよだって・・・。そして2年後に来た結果は・・・。日本で大学を卒業してしまっているので、申請は不許可だと・・・。

101105007_2 おかげさんで、カディスで過ごした2年間。毎日毎日アパートのベランダから、昼は真っ青な大西洋の水平線に落ちる夕日を眺めながら「呑む!」なんて生活を繰り返させていただきました。いい国だよ、まったく。

 毎日を只ダラダラと過ごした・・・という訳では、もちろんない。語学の壁に悩まされながらも、スペインという国を通して建築と文化を学び研究した日々は、今の建築家という職業にとても役に立っている。

 ある意味日本によく似た海に囲まれた国スペイン。ただし、北にはピレネーの向こうにヨーロッパの列強国が控え、南にはジブラルタルの向こうに紀元前数千年前からの偉大な文化をもったイスラムの攻勢を感じ、その中での入り混じった文化と環境で現れた建築物たち。いやその建築物を生み出した人々の生活を、ずいぶん見て回った。

 異国でめぐり会う方々は、日本でのそれとは比べ物にならないほどやさしく、そして大きな影響を私に与えた。故永川玲二先生や、外尾悦郎さんの熱い言葉。あのフセインと一緒に仕事をしたという男、アンブロシオ。空手を学ぶ学生フランシスコと彼のご両親の親切。日本語とスペイン語を教え合うインテルカンビオをした女性ノエリア・・・・・。日本食が食べたくなったら、どんな時でも美味しい料理を作ってくれたアツコさんとアントニオ。カディスの家を貸してくれたルイスとモンセが食べさせてくれた数々のチーズも忘れられない。

101105006  あぁ~行きてぇ~!スペイン行きた~い!でも今度は家族で行きた~い!ひとりはイヤよ~!みんな、一緒に行こう~!!

 しかし、子供達にこんなカッコは見せられんなぁ・・・ブツブツ・・・・・100回目の・・・・・ブツブツ・・・・・。

 

 

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