南スペインの画家 イシイタカシ
勝手に紹介したい。私の大好きなスペインを描く素晴らしい絵描き。石井崇さん。
アンダルシーアのグラナダの南側にあるシェラネバダ山脈。標高は3000mを越える。シェラはスペイン語で「山脈」。ネバダは「雪でおおわれた」と言う意味。まさしくあの暑い南部スペインで、夏でも雪に覆われた山。雪解けの水はグラナダの繁栄がよくわかるほど豊富で、ミネラルたっぷり。
その南面に広がるアルプハーラ地方。そこにある小さな小さな村、フェレイローラ。この人はここに住んで、大好きな絵を描き続けている。
勝手に絵や写真を掲載します。まぁ、会った事がないわけではなく、師匠・永川玲二氏の関係でセビージャでもカディスでも何度もお会いしているし、アルプハーラのお宅にも泊めていただいたこともある。・・・とは言え、10年以上も前の話だから、石井さんは覚えてないだろうけど・・・。このブログによって1円たりともお金を稼ぐことは無いので、許してください。
スペインに行って、スペイン好きを豪語し、いろんなスペイン名物の話をする事が出来ても、所詮それは上辺だけのスペイン。何々地方ではどんなワインあって、どんなパンがあって、どんなタパがあって、どんな食べ方をして・・・。この地方では石積みの建物が多くて、この地方では土を腐らして乾燥レンガ状にして木の骨組みを利用しながら積み上げて・・・。
スペインを知っていく上では、こういう知識をどんどん頭に入力していく事は大事なことで、楽しいし、いろんな事を知った気分にもなるし、ちょっと理屈を知っていた方がハモン・イベリコと一緒にスペインワインを楽しむ時にはとても美味しく頂けるんだろう。けれども、でもやっぱりそれだけでは本当のスペインの姿はわからない・・・。
住まないと・・・。住んで、住む事を楽しんで、住む事で苦労しないと・・・。本当のスペインは見えてこない。
石井さんも、渡西してもう35年目になるのかな。私が初めてお会いした頃は、それでも20年は住んでいると言ってたっけ。ちなみに永川玲二氏は、その10年前にシベリア鉄道で渡西している・・・。
先日また石井さんの著書を読んで、彼がその長い年月の中で、いかにスペインを理解し、大好きでいられるのか、またわかったような気がする。
もともと大金持ちでもない限り、いきなりスペインに乗り込んで長い時間滞在しようとしても簡単ではない。私もそうだったからよくわかる。ビザの問題もあるし、それ以上にお金だって必要だ。
石井さんは、ヒタノ(ジプシー)を使って、村祭りまわりのテキヤまでやって突き進んだ。ヒタノという文化は、簡単に書けるようなことではないが、フラメンコのようなスペインを代表する文化を生んだ人々なんだけれど、反面、差別・迫害の歴史もあり、なかなか難しい人たち。一人一人の個人はとてもハートが熱く、気持ちの良い人が多いけど、彼らと一緒に仕事をすることはそれなりにリスキーでもある。その彼らを使っていくんだから、石井さんはスペインの真髄を、ほんとよーく理解しているんだろう。
スペインの大地を踏み15年ほどで、アルプハーラの村フェレイローラに巡り合い、定住の地を見つけ出す。そして、今年で村民として20年が過ぎたはずだ。
とは行っても、スペインのド田舎の町だからね。アジアからの外国人が、この土地に根を張って生きていくという事だけでも、スペインを表から裏からよく知っていないと出来ない。
それはどの町でも同じことだよね。私も生まれ故郷を離れ、四日市と言う街に流れてきて、ここに家を建てた。アパート暮らし・サラリーマンだった時は何も感じなかった。ただ住民票がここにあるだけ。
しかし、土地を手に入れ、その土地の人になろうと決意した日から、どうやって心の底から四日市人になれるのか、どうやって四日市人と認めてもらえるようになるか、常に悩み行動している。
これは簡単にはいかない。町内の大掃除では人一倍草抜きを頑張っているし、自治会の防災隊のメンバーにも入った。いやそれだけではない。この家を設計する時から、この土地はこの地域にとって、今までどういう役割を果たしてきたのかという事を一年考え、その役割を壊さない、さらに持続していくことが出来るような建物・外構を設計したつもりだ。
それでも、まだまだわからないことだらけだ。まだこの街にきて6年と少しか・・・。石井さんには及ばない・・・。
石井さんの絵。スペインの街を、田舎を歩いた人ならわかると思う。そこにある【生】や【生活】が見えてくるようだ。単純にかわいらしいだけの絵ではない。村人が長い長い時間・歴史の中で培って生まれた結果の形が、浮き出しているように見える。褒め過ぎか・・・!?
写真の山の中の白い村は、フェレイローラの近くのカプレイラ村。山の中といっても、日本のそれとは違い、針葉樹に囲まれたっといった感じではない。水も素晴らしいが、お陽さまの恵みも素晴らしく、野菜もフルーツも最高の物ができる。本気で旨い!
彼の家のキッチンが良い。カッコいい・・・!スペインの田舎家で、ただでさえ味わいがあるんだけど、部屋の中央に絵のようなコンロがある。庭の畑で採れたばかりの野菜達を、井戸水でザバっと洗い、ここでサっと調理する。冬は暖炉でじっくり調理もいい。実は私の考える理想のキッチンがここにある。この絵だけでは、なかなか説明できないけど・・・。
写真に写っているロバは、石井さんのところにいたプラテーラ。プラテーラは名前。アンダルシアの偉大な詩人ファン・ラモン・ヒメネスさんが書いた「プラテーロとわたし」という叙事詩の中で、プラテーロというロバとの友情の話なんだけれども、そこから取った名前らしい。女の子だから、プラテーラ。
最後に、石井さんの写真。隣にいるのは、この年のミス・スペインになったハポンさんという女性。スペインには、ハポンという苗字をもった人がいる。ハポンはジャパン、日本という意味。実は、昔、伊達政宗が派遣した支倉常長率いる遣欧使節団の子孫と言われる一族がいる。ケッコウたくさんいる。なんとこの年(96年くらいかな?)、ミススペインになってしまった。遠くで血がつながっていると思うと、ちょっと嬉しい・・・。
これは97年だった思うんだけど、たしか初めてハポンさん一族がセビージャに集まりパーティを催した時の写真で、永川先生の関係で私も手伝いに呼ばれた。実は私がカディス大学に聴講生として潜り込んだ時、ハポン一族の代表者的な人でカディス大学の教授をやっていらっしゃる方にいろいろお世話になったのでした。一眼レフのカメラでいろいろ写真を撮ったハズなのに、なぜかこの写真しか残っていない。ハポン一族の大事な資料になったのにね。
こういう時に一緒に写真を撮れないのが、まだ20代だった私。ちゃっかり人に写真を取らせて、「送ってくれよぉ!」と言えるのが、バリバリ50代だった石井さん。私からブレザー借りて着てるくせに・・・ブツブツ・・・。
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