軒を出すのか?
どうしても、言葉の最初、思考の最初に【暑い!】って言葉が出てきてしまうね、今年は・・・。でも、こんな日でも事務所のクーラーは入れないで、この小さなUSB扇風機さんだけで頑張っている。今日も記録的温度です、外は・・・。
軒がグッと長くて窓の開口面積がデカイ。これが元来、この夏の温度が高く、湿度も高い日本の古来からの良い住宅の姿とされている。たぶんそうなんでしょう。風がたっぷり家中を流れ渡り、直射日光がどこからも家の中に入ってこないけれど明るい。土間に水を撒いて、入口には暖簾をソヨソヨと風で動かす。整然と片付いていて掃除が行きわたった畳の上にゴロっと横たわり、冷たい麦茶もしくは麦酒と風鈴の音。やっぱりいいわ、そんな家。
軒出そう。今度の建物は。いつもより、もっと風通しの良い建物にしよっと。
でも、もっと熱い外国の、例えばスペインの家だって軒をたっぷり出せばいいのに、そんなことない。南側の窓は出来るだけ小さく、下手すると(?)なるべく作らない、なんていう建物まで存在する。空気が比較的乾燥しているから、日陰は風が涼しいんだ。外の温度は40度を軽く越してもね。ならば、たっぷり深い軒に大開口窓。それでもいいのにね。疑問はたくさん広がります。
本当は、いろいろ訳があるんだけれども、それでも言える事は、答えは一つじゃないって事。風を取り入れることよりも、窓を小さくして日差しを遮る。熱伝導率の低い石や土の壁、さらに外側を白く塗って太陽光を反射させて、室内の温度を上げない。必然的に出てきた工法なんだけど、村をいくつも回ってみると、長い時間を掛けて編み出された村人の苦労の形は、必ずしも一つの形にはならない、って事もわかる。白い村ばかりじゃなくて、地元の赤土で作った、赤い村もあるんだ。
確かに自然が教える理想の形ってのはあるけれど、住む人自身がどんな住み方をしたいかだよね。好き勝手に適当に、って事ではなくてね。自分や家族が楽しみたい生活をじっくりと考え、環境や地域の中での自分と家族の姿を考える。そのお手伝いをするのが、住宅の設計士の仕事。出来ればクライアントには、設計士以上に考え悩んでほしい。そうすれば、出来上がった建物は、金額以上のすごい財産になるだろう・・・と思ってます。
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