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2008年8月の5件の記事

夏の思い出

 涼しくなってきた。仕事に集中できるようになってきた。すると、山のように仕事があった。ペースが上がらない8月。我々も8月はヨーロッパ人のように【ばけーしょん】という文化を作り、心身ともに健康になって効率の良い仕事が出来ればいいのに・・・。まっ、1ヶ月休んだら、仕事のペースをもどすのに1ヶ月掛かるか・・・。しかし不思議だ。忙しい時ほど、マメにブログとか書けるようになる。

080825001_3  学生時代の夏休みの写真が出てきた。バイトして貯めたお金で、遊びまくってた。しかし、ボケーっとしないでシッカリバケーションを楽しめば、素晴らしい経験も手に入る。この年も、素晴らしい夏の経験をした。苦悩の経験でもあったが・・・。この写真は北アルプス・・・じゃありません。後ろの山は、マウント・マッキンリー。アラスカのデナリ国立公園内である。親友たちと三人で、シアトルからカナディアンロッキーを越え、アラスカをぐるっと回り、最終目的は北極海!という無茶な遊びをした。

080825009  旅路はアラスカン・ハイウェイがもうすぐ50周年を迎えるってんで、全面(?)舗装工事をやってる最中で、という事は、フェアバンクスから北は まだほとんど未舗装で・・・。なのにカッコつけてタンクの小さい中古のアメリカンバイク買って走ってたもんだから、後ろにポリタンクにガソリン積んで走っても、ツンドラ気候の真っただ中で人家もないどころか音さえもほとんどしない道で、ガソリンスタンドなんか滅多になくて、結局ユーコンリバーから北に100km走ったところでちょうど【ここから北極圏】というところ(ただの空き地に看板があっただけ)で止まり、最終目的の北極海には届かず引き返したきたという寂しい思い出がある。

 スズキ・サベージ650というバイクは、名車である。650ccで単気筒。小さなボディーにすごい音。初めてこの音を聞いた時は、感動で震えた。トルクはすごい。しかしもちろんスピードは出ない。馬力もさほどない。フルスロットルで110kmくらいしか出ない。こんなバイクで、アメリカ大陸のツーリングをやってはいけません。毎日、来る日も来る日も朝から晩までフルスロットル。しかも単気筒。10,000kmほど走ったところで最後にバルブがぶっ飛びました。しかし日本の単車はすばらしい。バルブがぶっ飛んだ後も1000kmは走ることが出来た。なんかキツツキのようなカカカッという音がしだしたかなと思ったら、だんだんその音は大きくなり・・・。でも最後には止まりました。

080825007 その前に、この単車はチューブタイヤであった。それでアラスカンハイウェイのダートを何百キロだか何千キロだか走ってしまい、エンジンより先にタイヤが逝きました。タイヤが完全に擦り切れてチューブが見えて、穴があいた。チューブに穴が開くたびにパッチで修理して、擦り切れたタイヤの底には寝袋の下敷き材を10cm幅に切ってガムテープで貼り、ダマシダマシ走った。日本から遠く離れたツンドラの大地でね。大変な経験だったな。一人だったら、本気、泣いてただろうね。

 最後はヒッチハイクでバイクごと拾ってもらった。この旅、いろんな人に拾ってもらった。この時は、ヨーロッパ系らしい二人連れのバン。道端で困っている人を拾うなんてことは、この時代のアメリカでは珍しくない。この二人、いい人なんだか悪い人なんだか・・・。ビールを飲みながら運転。きっと吸っているのはマリ○○○だ。せっかく拾ってもらったけど、もっと不安がつのる。

 着いたのは、ハイウェイから少し入った森の中。彼らの簡素な家がある。テスリンという町らしいが、他の家はほとんど見えない。今日はここの庭でテントを張って寝させてもらう。彼らはカーペンターで飯食っているらしい。仲間たちがやってきた。一人の白人と、数人のエスキモー(インディアン)。「はじめて日本人を見た。はじめての日本の友達に乾杯!今日は裏の湖でみんなで飯を食おう。我々の新しい友達のために。食べ物は我々が出すから、ビールを少しおごってくれないか」。ほんの少しの豚肉とサーモンとビールで、小さなバーベキュー大会。

080825005 裏に湖。音がない。おそろしいほど静か。対岸に家なんか一つもない。風が小さな小さな波音を立てている。夕日が山に落ちていく。これ以上の景色を見ることがこの先あるだろうか。続くハプニングと疲労。その中で救ってくれた人達は、はじめちょっと怖かったけど、初めて会った日本人に小さいけれど最高のパーティーを催してくれる。ヨーロッパから来た白人たちは、いろいろ事情があって流れてきたらしい。エスキモーの彼らは、現地の人間なんだろうか。決して裕福とは言えない様子。白人の中の一人、背が高い髭のおじさん、ロビン。夕暮れの音のない湖に向って、突然ハーモニカを吹き始める。ブルース。なんか映画でしょ、この光景は!

080825002_5 翌朝、近くのガソリンスタンドで何とか使えるチューブを探して、再スタート準備OK。一日しか一緒に居なかった彼らが、別れを惜しみ泣いてくれる。8歳のエスキモーの少年マイケルが、泣きながら友達の証しだと言って着ている自分のTシャツを脱いで俺にくれた。そのTシャツを、今、我が息子が来ている。古いTシャツなのに、なぜか気に入っている様子。見るたびにジンとくる。

080825012_5  このあと、良いハプニング、悪いハプニングといろいろあったが、これ89年のお話だから、約20年も前の思い出。旅の日記があって、読み返す。あぁ、また涙が出そう!

080825011_3  ちなみに、バルブがぶっ飛んだエンジンのヘッドはこんな感じです!

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ひとつできた。

 先日、一つの物件が完成しました。小さな平屋ワンルームの集合住宅。

080821001 なんと、間口8m・奥行き60mという細長~い土地。ここにアパートを建てたいという話を聞いたとき、正直びっくりした。開業前、5年もアパートを作る会社にいたから、いろんな土地を見てきた。こういう【うなぎの寝床】といわれる土地がなかった訳ではないが、接道部分が8mを切っているというのは、なかなか珍しい・・・。専用住宅なら、いろいろな考え方もできるし、特に都会なら間口8mもそんなに珍しくない。けれど集合住宅というのは、【収益性】というのが最重要になってくるから、部屋の面積や間取り、外構計画も工夫がいり、駐車場も十分必要。しかし、これでは駐車場だけだって作りにくい・・・。

080821002 厳しい条件は他にもいくつもある。土地は南北になが~く、南側に大きな建物。西側に隣地の駐車場空地があるが、その向こうには3階建のアパートがこちらを見下ろすように建っている。道路には側溝がなく、雨水排水は、裏の用水路だけ。60mの長さの排水を、全部裏まで引っ張ることになる。ここに明るくて、住みやすく、収支効率が良いアパートを建てる。大手アパート会社なら断るでしょう。しかし、だからこそ経験を買われて依頼がきたのだ。頑張らねば!

 この第一回目のプラン図には1週間かかった。予算があって意匠に凝る事が出来るならば設計にたっぷり時間を掛けられるが、田舎では家賃が取れない。必然的に設計料も抑えなければならないから、本来、基本のプランは、1日くらいでやらないと儲けられない。

080821003 結果、一回目のプレゼンで納得をいただいた。【思いの通りです!】と。これが設計屋にとって一番うれしい言葉だ。たしかに、クライアント自身が住むわけではない集合住宅だが、すべての管理を自分でやるという今回の施主の眼はとても厳しかった。それだけに、設計の意図・内容を最初から十分にご理解いただけたと思う。

080821008_2 紆余曲折あり、プレゼンから1年と4ヵ月後の今月、ようやく完工。最後に奥さまに、【人間の住む所です!】とお褒めの言葉をいただく。なぜこれがお褒めの言葉なのか。いくつもの集合住宅をもち、庭掃除から電球交換まで自身で行うご夫婦。その目で見て、【人間らしさを感じる】と言っていただけた。なかなかアパートで人間の住むべき所と感じる建物は少ない。この建物は、設計者がそこで【生きる姿】を十分想像して建てられた建物だと。

080821005080821006 でも正直なところ、やはりこの建物も、クライアントの前向きな気持ちで成功したのは言うまでもない。ご自身が住むことはない集合住宅にもかかわらず、ユニットバスの扉の形から、キッチンの換気扇形状まで、いろいろな部分でハッキリとした意見をもち、また設計者の提案に関してもよく理解し、納得が出来ない部分は、やわらかく否定した。建物を完成品として受け取るのではなく、これから自分達が世話をし、手入れをし、作り上げるのだという事を、アパートにも関わらず理解しておられた。ホントに敬服し、感謝いたします。

080826 あと、監督さん、大工さんをはじめ職人さん達。細部までホントによく気を使っていただき、ありがとうございました。今回は特に外構の職人さん。心づかいと技術。すばらしかった。本当にありがとう。

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雨どい 無いと良いよね。

 先週お仕事で、高知のある会社に伺いました。山中の絶景の中にある建物。きれい!楽しい!すばらしい!

080816001 【雨どい】がありません。街中ではできない(やりにくい)技。しかし、やはりキレイな納まりになると思う。許可もなく勝手に写真を添付します。写真を撮る時も許可の確認をしませんでした。ごめんなさい。でも、いつかこのようなシンプルで素敵な建物のあり方を紹介したかった。

080816002 設計をやっていると、雨水や汚水・雑排水をどうやってしかるべき場所に誘導するか、結構そればかりを考えている時間が多い。軒先から落ちる雨水は、コンクリートやアスファルトの上に落ちると跳ね上がり、人や車に掛かったり、建物や周りの設備にあまり快くない絵を描いたりする。だから雨どいをつける。人間の文化か創った最良の方法だけれども、なんとなく、絵的に面白くない。いや、雨の日に雨の姿をもっと感じてもいいんじゃない?

 山中の森を切り開いて作られた建物。屋根に落ちた雨は、自然に軒先まで走り、そのまま大地に落ち、地中に浸透して行く。当り前の姿に感じる。軒がもう少し出ていてもよかったかも。雨の日に軒下を歩く楽しみが増えただろう。

080816003 スペインでは、こんな無茶な雨どいもあったな。せっかく横ドイで拾った雨水を、竪トイを使わず、そのまま空中で散布していた。地面はきれいな石畳だから、3階建てか4階建ての集合住宅の屋根から散布される雨は、道路に落ちて跳ね上がり、まるで下から豪雨が降っているかのように四方八方に飛び散っている。ところがこの雨どい、散布しているその先端がきれいに装飾されている。実に様々な装飾の形があり、各建物で競争でもしているかのようだ。

080816004 きっと理由があるに違いない。昔は、石で舗装された道路中央には汚物が流れていたと聞く。だから道路を洗っているのだろうか。いやいや、雨の少ない地域だとしたら、空中に雨水を散布して、少しでも湿度を上げていたとか・・・。そんなハズもないか・・・。ずっと考えていたが、結局この理由は未だにわからない。

 建物って建てる場所の条件で、いろいろ出来る事が違う。まぁ、山の中のこんなすばらしい条件だから、雨どいのない納まりが出来たんでしょう。しかし、山の中だからある問題もありました。虫!とクモの巣。これは、どの山の建物にも付きもの。お世話が大変そうです。

 ちなみに内部はさらにキレイでした。許可を取ってないので写真は出せませんが。

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軒を出すのか?

 どうしても、言葉の最初、思考の最初に【暑い!】って言葉が出てきてしまうね、今年は・・・。でも、こんな日でも事務所のクーラーは入れないで、この小さなUSB扇風機さんだけで頑張っている。今日も記録的温度です、外は・・・。

080805001 軒がグッと長くて窓の開口面積がデカイ。これが元来、この夏の温度が高く、湿度も高い日本の古来からの良い住宅の姿とされている。たぶんそうなんでしょう。風がたっぷり家中を流れ渡り、直射日光がどこからも家の中に入ってこないけれど明るい。土間に水を撒いて、入口には暖簾をソヨソヨと風で動かす。整然と片付いていて掃除が行きわたった畳の上にゴロっと横たわり、冷たい麦茶もしくは麦酒と風鈴の音。やっぱりいいわ、そんな家。

 軒出そう。今度の建物は。いつもより、もっと風通しの良い建物にしよっと。

080805003 でも、もっと熱い外国の、例えばスペインの家だって軒をたっぷり出せばいいのに、そんなことない。南側の窓は出来るだけ小さく、下手すると(?)なるべく作らない、なんていう建物まで存在する。空気が比較的乾燥しているから、日陰は風が涼しいんだ。外の温度は40度を軽く越してもね。ならば、たっぷり深い軒に大開口窓。それでもいいのにね。疑問はたくさん広がります。

080805002  本当は、いろいろ訳があるんだけれども、それでも言える事は、答えは一つじゃないって事。風を取り入れることよりも、窓を小さくして日差しを遮る。熱伝導率の低い石や土の壁、さらに外側を白く塗って太陽光を反射させて、室内の温度を上げない。必然的に出てきた工法なんだけど、村をいくつも回ってみると、長い時間を掛けて編み出された村人の苦労の形は、必ずしも一つの形にはならない、って事もわかる。白い村ばかりじゃなくて、地元の赤土で作った、赤い村もあるんだ。

080805004 確かに自然が教える理想の形ってのはあるけれど、住む人自身がどんな住み方をしたいかだよね。好き勝手に適当に、って事ではなくてね。自分や家族が楽しみたい生活をじっくりと考え、環境や地域の中での自分と家族の姿を考える。そのお手伝いをするのが、住宅の設計士の仕事。出来ればクライアントには、設計士以上に考え悩んでほしい。そうすれば、出来上がった建物は、金額以上のすごい財産になるだろう・・・と思ってます。

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風が通る。

 ブログ、再開します。

 まことに恥ずかしい限りですが、ブログを更新していくことがこれほど難しいとは思ってもみませんでした。気がつくと、もう半年もほったらかし。気負いすぎだったと思います。これまでは、1つのブログの完成に3日くらい掛けていました。もっと気軽に、みんなに忠告されています。

 かくして、いそがしい(?)半年間。それでもブログに書きたいなと思う出来事はたくさんあった。

080801001 今年の夏は猛暑。暑くても仕事をしなくてはならないので、我が家の1階の事務所でセク セクと働いているが、「クラーを付けるか否か・・・」という葛藤というか自問自答というか、それといつも闘っている。仕事なんだから、業務効率を上げて売上げを伸ばすべきだというのが答え。答えは知っている。でも、昨日【卓上USB扇風機】なるものを買ってきてしまった。やはり、個人事業主として、家計も事務所経費も一色淡に考えてしまう。

 でもね、当たり前ですが、風が家の中を縦横無尽に通り抜ければ、それが最高なんだよね。

 事務所の続きに小さな和室がある。4畳半。将来の寝室のつもり。今は子供たちと一緒に寝ているから。ここには、小さな北窓があって、南にも中庭に面する大窓。大窓の前にはケヤキの株立ち。ここが、すごく風が通る。今年のこのクソ暑い夏でも、全く冷房要らず。(はじめから無い。)家族達も午後の暑い時間はここに逃げ込んでくる。昔の日本の住宅は、こうだったんだろうなぁ、な~んて、他人が設計したように言うが、まぁ、もちろん設計中から風の事はトコトン考えた。でもホントにこんな良い風が吹くなんて。

080801002  この和室で家族たちが避暑地(?)を満喫している時に、隣の事務所を締め切って冷房は掛けにくい。パソコンやコピー機なんかもあるからね、なんて言っても説得力がない。しかし、実はこの風は事務所の打ち合わせ机横の大窓にも続いている。事務所はわざと南の窓を殺しているから、部屋自体は暑くなりにくい。和室からの風は、事務所の打ち合わせ机まわりにも、ソヨソヨと通り抜ける。大勢での打ち合わせは暑いけど、普段はこれで十分だな。パソコンの前だけが少し暑いか・・・。

 そこで【卓上USB扇風機】。これ一台で、意外と設計の仕事ができるんだ!

 とまぁ、これが小さな無駄遣いをした言い訳です。ちなみに【卓上USB扇風機】、一台780円でした。

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