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2007年9月の2件の記事

ルイスの家で、旨かった!

 床が石で、建具の取り付けが悪くて、窓なんか内開きだから嵐の日なんて雨がウチの中に入ってきたりして。基本的に壁は塗装だから、壁にもたれ掛かったりすると、服に白い汚れが付いたりする。テレビはあんまり映らんし、お湯はたっぷり出ないし、水は水道から直接飲むなって言われている。

 でも、なんで座ってるだけで楽しいんでしょう。アンダルシーアの家。

070911001 窓辺に座って、外をずっと見ている。網戸なんかないから、夕方からは虫も入ってくるわな。でも、いつまででもそうしていたくなる。通行人の姿をずっと目で追いかけている。白い壁と青い空とのコントラストに、ウン、ウンと一人でうなずいている。どの家も窓辺の花がすごくきれいで、水をあげるその姿が、すごくカッコ良く見える。外壁にタイルが貼ってあって、【なんとか通り】って書かれている。それが妙に気に入っている。

 日本で、いつまでも座っていたいなんて感じたことあったっけな。景色の相当良い窓ならまだしも、隣の壁が2mも離れてないちょっと窮屈な窓なのに。

 忘れていた事に気づかされたわ。【家は、楽しい】。

 スペインのスタイルを持ち帰るなんて事は、とても馬鹿らしい事だってすぐに気がついたけれど、もう一つ気づかされたのは【それ】だった。アンダルシーアの家がすばらしいって事ではありません。住む人の心が踊るような家ってある。

070911002 家は住む人の思い入れです。最新の空調設備だとか、取って付けたような吹き抜けだとか、雨が降るたびに勝手にきれいになっていく外壁だとか、まぁそんなものは2次的に必要になっていくかもしれないけれど、【家】はやっぱり、日曜の朝とか、夜中に仕事から帰った後とかに、座って・・・座っているだけで、『ニマっ!』としてしまう・・・、そんな【家】がいいよ。

 人それぞれに、『ニマっ!とポイント』は違う。設計士って、2回や3回会っただけで、その人の『ニマっ!とポイント』がわかるかな?わかる設計士もいるんでしょうね、きっと。

 家族構成と、希望ばかりを聞く設計士がいる。希望を聞くばかりで、引き出すことをしない。どうでしょう。

 【家】を『完成品』として引き渡す工務店がある。【家】は住み手が造るものなのに。どうでしょう。

 友人のルイス・ラプラサは、セビージャの川べりの古い長屋の一部を買った。スペインにいる間、3年以上もずっとお付き合いをしていたが、彼はいつも家を直していた。間仕切りして、ペンキ塗って、古い家具を買って・・・、うらやましくなるような可愛らしい、楽しそうな家が出来上がっていく。

 土日の昼ごはんは、外に机を出して食べる。机がボロいから、テーブルクロスはお決まり。さすがにスペインですから、チーズもチョリソも、ご自慢の物で種類もいっぱい並ぶ。これが旨いのよ。そうじゃないのもあるけど・・・。

070911003 長屋のオバサンたちが、競い合って壁にカラフルな花の鉢を飾っている。実はセビージャで一番になって新聞に出たくらい、有名な花で飾られた長屋でした。

車は乗らない。持ってない。必要なときだけ友達に借りる。だから昼からたっぷりワインが飲める。まぁ、スペインでは、みんな飲酒運転ですけど・・・。

 娘が出来て、半地下になっていた物置を将来の娘の部屋にと、セッセと直していた。でも川べりの石とコンクリートで出来た半地下の部屋は、湿気だらけで・・・すごかった。しばらくして、長屋の隣りも買ったらしい。お金が出来たら広げていく。なんか基本だね。

家を建てる人には、家を好きになってほしい。住む事を楽しんでほしい。【住む】って事が【家】という道具を造っていく事で、楽しくて嬉しい行為になる。一生自分の【家】を造り続けたら、一生楽しいんです。

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目玉揚げ

 目玉焼きが食べたかった。彼らは【焼く】という事を知らない。油入れすぎだって!たっぷりの、たっぷりの、ホントにたっぷりの新鮮なオリーブオイルの上で、俺が頼んだ玉子が泳いでいた。

070902001 乾燥した大地には、ただ一面オリーブ畑が広がっている。映画で見るアメリカやメキシコの乾ききった地平線の姿と違い、スペインのそれはいくつもの丘が連続し、単調なオリーブ畑になんだか小気味良いリズムをつけている。でもそれを見た日本人の多くは、なぜが【いがぐり頭のドアップ!】を思い出す。 わかる人はわかるとおもう・・・。

 暑い。けっこう一生懸命働くスペイン人だが、昼の暑さは40度を超え、その中での作業は体力を異常に消耗させる。そんな時、身体にエネルギーを与えるのがオリーブオイルとニンニク、そしてワイン。これが旨いんだ。疲れが取れるし、エネルギーが沸いてくる。世の中うまく出来てるもんで、過酷な条件で農作物を作っているが、やっぱりそこで獲れたもんで作った料理が、そこでは一番旨いし、一番身体に適している。

070902002 だから、おそらくそれが正しい作り方なんだろう。どんな料理にも、まずはたっぷりのオリーブオイル。【焼く】という漢字から俺が連想する油の量とずいぶん違うんで、一瞬目が丸くなる。まぁ、今食ったら【メタボ】だな。

 アンダルシアの暑さの中で、例えば【miga(ミガ)】なんて料理は、パンを小さくちぎって揚げ炒めるだけ。マラガの田舎の小さな白い村て食べた【miga】は、例の【目玉揚げ】の上にたっぷりのmigaがふり掛けられていた。おまけに隣にチョリソ(サラミ)が置いてあった・・・・・。しかし、一緒に飲んだ冷た~いドライな白ワインとの取り合いが最高で、忘れられない。うまかった。ホント!052_2

 地中海の建物を日本に持ち帰ったら日本人にウケルだろう、儲かるだろうと思って渡西した。でも、すぐにわかった。その土地にはその土地の文化がある。歴史があり、習慣があり、理由がある。建築は文化の鏡のようなもの。映るものがないなら、その鏡は存在出来ないわ。それからは、スペイン文化の中身を勉強をした。というか、遊んだ。どっぷりスペインに浸かってみた。そりゃやっぱり、楽しかった。最高でした!

 さて私は日本人。そして日本在住、四日市在住だ。これからは、もっともっとこの街を勉強させてもらいます。

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