ルイスの家で、旨かった!
床が石で、建具の取り付けが悪くて、窓なんか内開きだから嵐の日なんて雨がウチの中に入ってきたりして。基本的に壁は塗装だから、壁にもたれ掛かったりすると、服に白い汚れが付いたりする。テレビはあんまり映らんし、お湯はたっぷり出ないし、水は水道から直接飲むなって言われている。
でも、なんで座ってるだけで楽しいんでしょう。アンダルシーアの家。
窓辺に座って、外をずっと見ている。網戸なんかないから、夕方からは虫も入ってくるわな。でも、いつまででもそうしていたくなる。通行人の姿をずっと目で追いかけている。白い壁と青い空とのコントラストに、ウン、ウンと一人でうなずいている。どの家も窓辺の花がすごくきれいで、水をあげるその姿が、すごくカッコ良く見える。外壁にタイルが貼ってあって、【なんとか通り】って書かれている。それが妙に気に入っている。
日本で、いつまでも座っていたいなんて感じたことあったっけな。景色の相当良い窓ならまだしも、隣の壁が2mも離れてないちょっと窮屈な窓なのに。
忘れていた事に気づかされたわ。【家は、楽しい】。
スペインのスタイルを持ち帰るなんて事は、とても馬鹿らしい事だってすぐに気がついたけれど、もう一つ気づかされたのは【それ】だった。アンダルシーアの家がすばらしいって事ではありません。住む人の心が踊るような家ってある。
家は住む人の思い入れです。最新の空調設備だとか、取って付けたような吹き抜けだとか、雨が降るたびに勝手にきれいになっていく外壁だとか、まぁそんなものは2次的に必要になっていくかもしれないけれど、【家】はやっぱり、日曜の朝とか、夜中に仕事から帰った後とかに、座って・・・座っているだけで、『ニマっ!』としてしまう・・・、そんな【家】がいいよ。
人それぞれに、『ニマっ!とポイント』は違う。設計士って、2回や3回会っただけで、その人の『ニマっ!とポイント』がわかるかな?わかる設計士もいるんでしょうね、きっと。
家族構成と、希望ばかりを聞く設計士がいる。希望を聞くばかりで、引き出すことをしない。どうでしょう。
【家】を『完成品』として引き渡す工務店がある。【家】は住み手が造るものなのに。どうでしょう。
友人のルイス・ラプラサは、セビージャの川べりの古い長屋の一部を買った。スペインにいる間、3年以上もずっとお付き合いをしていたが、彼はいつも家を直していた。間仕切りして、ペンキ塗って、古い家具を買って・・・、うらやましくなるような可愛らしい、楽しそうな家が出来上がっていく。
土日の昼ごはんは、外に机を出して食べる。机がボロいから、テーブルクロスはお決まり。さすがにスペインですから、チーズもチョリソも、ご自慢の物で種類もいっぱい並ぶ。これが旨いのよ。そうじゃないのもあるけど・・・。
長屋のオバサンたちが、競い合って壁にカラフルな花の鉢を飾っている。実はセビージャで一番になって新聞に出たくらい、有名な花で飾られた長屋でした。
車は乗らない。持ってない。必要なときだけ友達に借りる。だから昼からたっぷりワインが飲める。まぁ、スペインでは、みんな飲酒運転ですけど・・・。
娘が出来て、半地下になっていた物置を将来の娘の部屋にと、セッセと直していた。でも川べりの石とコンクリートで出来た半地下の部屋は、湿気だらけで・・・すごかった。しばらくして、長屋の隣りも買ったらしい。お金が出来たら広げていく。なんか基本だね。
家を建てる人には、家を好きになってほしい。住む事を楽しんでほしい。【住む】って事が【家】という道具を造っていく事で、楽しくて嬉しい行為になる。一生自分の【家】を造り続けたら、一生楽しいんです。
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